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AI活用

AIに前回の続きを頼めない——引き継ぎは1枚の作業ボードに寄せる

結論: AIへの引き継ぎは、探させるのをやめて1枚に寄せた時点で終わります

AIに前回の続きを頼んだのに話が通じない。この詰まりの原因は、AIの性能ではなく手がかりの置き場所です。弊社の結論は1つです。続きの手がかりは1か所にしか置かない。そして、そこ以外は探させない。

私たちは以前、続きを頼まれたAIに過去のやり取りや覚え書きを探させていました。結果は空振りです。探しにいった先が、そもそも別のパソコンからは見えない場所だったからです。この記事では、機械をまたぐと引き継ぎが切れる理由と、私たちが作った「引き継ぎの1枚」の中身、そして書き手をAI自身にした線引きを開いていきます。

AIに過去のやり取りを探させる引き継ぎと、1枚の作業ボードに寄せる引き継ぎを、時間と結果の観点で並べて比較した図

なぜ同じAIなのに、パソコンを変えると続きが通じないのか?

答えを先に言うと、AIが覚えている中身は、使っているパソコンの中に置かれているからです。会話の記録も、こちらが覚えさせた設定も、その機械の中の書類にすぎません。別の機械から同じAIに話しかけても、前の機械の中身は見えない。人であれば「昨日の件」で通じますが、機械が変わると前提そのものが存在しない状態から始まります。

会話が変わるたびに前提が戻る性質と、その手入れについては記憶は量より鮮度で持たせるに書きました。今回はその一段外側の話です。同じ会話に戻れないだけでなく、同じ機械にすら戻れない。私たちは、パソコンを持ち替えて仕事を続けます。移動中は手元の機械、事務所では据え置きの機械。その切り替えのたびに、引き継ぎが切れていました。

続きを「探させた」ときに、何が起きたのか?

これは実際に踏んだ失敗です。ある作業を1台で進めた翌日、別の機械で続きを頼みました。AIは律儀でした。過去の会話の履歴を探し、覚え書きの置き場も探し、それらしい手がかりを集めようとしました。そして見つけられませんでした。探し方が下手だったのではありません。探しにいった先が、機械をまたいで共有されない場所だったからです。原理的に見つからないものを探させた時間が、そのまま消えました。

そこで2つ決めました。1つ目は、手がかりの置き場所を、全部のパソコンで同じ中身が見えるクラウド同期のフォルダに移し、1つのファイルに固定すること。2つ目は、続きを頼まれたらまずそのファイルを見る、それ以外は探さない、と禁止まで書いておくことです。禁止を書かないと、AIは見つからない場所を丁寧に探し続けます。私たちが指示に書いたのは「探すな、ここを見ろ」という順番でした。

以前、引き継ぎは同じスレッドに指示を置けば終わると書きました。あれは同じ場所に戻れる場合の話です。場所そのものが変わる働き方では、置き場所を1枚に決め直す必要がありました。

引き継ぎの1枚には、何を書くのか?

答えを先に言うと、経緯ではなく「次の一手」です。何があったかを長く書いても、読む側は結局どこから手を付けるか判断できません。私たちが1案件ごとに書いているのは、①いま何がどこまで済んでいるか ②誰の返事や操作を待っているか ③次の一手 ④終わったら消す期限、の4つだけです。

引き継ぎの1枚に書く4項目を、進み具合・待っている相手・次の一手・消す期限として中心から放射状に配置した図

重いのは3つ目です。「次の一手」は、そのまま実行できる形まで落とします。貼り付ければ動く命令文か、相手に聞くべき1つの質問か、そのどちらかです。「確認する」「進める」は次の一手ではありません。読んだ側がもう一度考え直すことになり、引き継ぎになっていないからです。次の一手が具体的な1手になっていない行は、書いていないのと同じでした。

4つ目の期限も外せません。終わった案件を残したままにすると、1枚が読まれない長文になります。私たちは完了した行を下に移し、一定期間で消しています。ここはAIに任せる範囲を日本語1枚で決める考え方と同じで、増やすより減らすほうに手間をかけています。

書き手を人にすると、なぜ続かないのか?

答えを先に言うと、更新が「作業の後の追加作業」になるからです。人が思い出して書く運用は、忙しい日から順に抜けます。抜けた翌日に別の機械で続きを頼むと、1枚は古いままで、結局また探すことになります。

そこで書き手をAI自身にしました。手を止めるとき、使う機械を移るとき、こちらの操作待ちになったとき——その場で1行だけ更新してから応答を終える、という責務を指示に書いています。作業の終わりと更新を同じ動作にしてしまえば、思い出す必要がなくなります。

ここには落とし穴が1つあります。この種のルールを書いた指示書は、新しく始めた会話の最初にしか読まれません。追記した瞬間に、すでに開いている会話へ反映されるわけではない。弊社では、ルールを足した日は開いたままの会話には効いていない前提で、こちらから会話を開き直すようにしています。仕組みを直したのに直後だけ元の動きが出る場合、たいていは中身ではなく読み込む時点の問題でした。

手を止める・1行書き足す・別の機械で1枚を開く・続きから実行する、という引き継ぎの更新が循環する流れを示した図

明日から試せる、引き継ぎを寄せる第一歩

最初にやることは1つです。全部のパソコンから同じ中身が見えるフォルダに、ファイルを1つ作ってください。名前は何でも構いません。そこに、いま途中で止まっている案件を3件だけ書きます。1件につき、いまの状態を1行、待っている相手を1行、次の一手を1行。次の一手は、貼り付ければ動く命令か、誰かに聞く1つの質問まで落とします。

書き終えたら、AIへの指示に1文だけ足します。続きを頼まれたらこのファイルを最初に見ること、他は探さないこと。所要時間は10分ほどです。探させる引き継ぎをやめるのに、新しい道具は要りません。置き場所を1つに決めて、次の一手だけを書き続けるところから始まります。

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