結論: 伸びない原因は、本数でも編集の質でもないことがあります
動画が伸びないとき、原因は本数でも編集の質でもないことがあります。私たちは自社で運営している音楽のチャンネルで、2ヶ月半ほど投稿を積んで数字がほとんど動きませんでした。原因を探して分かったのは、作り方の問題ではありませんでした——狙っていた言葉が、そもそも月にほとんど検索されていなかった。
この記事では、探している人が実際にいる言葉の集まりを**「需要の棚」**と呼びます。良い商品を作っても、人が通らない棚に並べれば手に取られません。動画も同じでした。
私たちは何を基準にテーマを決めていたか?
答えを先に言うと、世界観です。
そのチャンネルは、色使いとモチーフを決めて世界観を統一する形で立ち上げました。テーマも曲名も、その世界観から展開しています。加えて、狙う言葉を絞れば競合が少なくて有利になるという読みもありました。ニッチ(対象を絞った小さな市場)を取る、という発想です。
投稿の仕組み自体は動いていました。2ヶ月半で十数本を出し、制作の手を止めずに積める状態は作れていた。それでも数字は動きませんでした。私たちは最初、原因を作り方の側に探しました。もっと本数を増やすか、質を上げるか、と。量を出す仕組みは動いていて、並べる棚だけが間違っていました。
本数を増やしても数字が動かないとき、何を見たか?
答えを先に言うと、その言葉が月に何回検索されているかです。
調べ方は難しくありません。キーワードの検索回数を調べる道具(無料で使える範囲があります)に、自分たちが狙っていた言葉を入れるだけです。結果は、月間の検索数が実質ゼロでした。一方、同じジャンルで一般的に使われている言葉——たとえば眠るときの環境音や雨の音といった言葉は、月に数十万回以上検索されていました。桁が違うのではなく、有無が違っていた。

ここで私たちが取り違えていたことがはっきりしました。競合が少ないのではなく、探している人がいなかった。 ニッチと無人は別物です。ニッチは人が少しいる棚で、無人は誰も通らない棚です。前者は勝てますが、後者はどれだけ良いものを並べても数字が立ちません。私たちが2ヶ月半かけて確かめたのは、この違いでした。
競合を調べる工程自体は以前から回していました(競合リサーチを3層に分けている話)。抜けていたのは、その手前です。競合を見る前に、その棚に人が通っているかを見ていませんでした。
作る前に、何を確認するようにしたか?
答えを先に言うと、2つの数字を先に見て、満たさない題材は作らないと決めました。
1つ目は月間の検索数です。私たちの基準は5万未満なら見送り。2つ目は競合の強さの指標で、これが一定の水準を超えていたら見送りにしています。数字そのものは道具によって違うので、大事なのは水準の置き方です。「調べてから決める」ではなく「基準を満たさなければ作らない」と決めておくことが要点でした。調べるだけなら、私たちも以前からやっていた。作りたい題材が出てきたときに基準へ引き返せる形にしていなかった、というのが実際の失敗です。

このとき捨てなかったものが1つあります。世界観です。狙う言葉は需要のある側から取りますが、見た目と世界観は自社のものを保っています。つまり探されるための言葉と、選ばれるための見た目を分けたということです。世界観ごと捨てる案も出ましたが、それは差がなくなる方向でした。ここは残す、と線を引いています。
作ってしまった分は、どうするか?
答えを先に言うと、作り直さず棚だけ移します。
中身そのものは使えます。手を入れるのは、タイトルと検索用の語だけです。ここを需要のある言葉に書き換えれば、同じものが人の通る棚に並びます。新しく作り直すより費用も時間もかかりません。ただし正直に書くと、この書き換えは案を出した段階で、まだ実行していません。既存の分に一斉に手を入れる判断は残しています。
もう1つ、先に決めたことがあります。撤退の条件です。棚を移してから90日で表示回数が立たなければ、書き換えを続けるのではなく作り直しに移る、と期限を切りました。やめる条件を先に決めておくと、粘るか切るかで迷わなくなります。 数字が動かない期間は、後から伸びる可能性と見込みのない状態が同じ顔をしています(後から伸びる動画と資産の考え方)。だから期限のほうを先に置きました。
明日から試せる、言葉1つの検索数を調べる
いま進めている題材を、検索されるときの言葉1つに言い換えてみてください。自分たちの企画名ではなく、探す人が打ち込む言葉です。それを検索回数の調べられる道具に入れて、月間の数を見ます。かかるのは数分で、費用も要りません。
見るのは順位でも競合でもなく、まず有無です。実質ゼロだったら、その題材は作り方を直しても数字が立ちません。言葉を1段階だけ一般的な側にずらして、また調べます。通っている棚が見つかってから、そこに自社の見た目を持ち込む——この順番が逆になっていたのが私たちの2ヶ月半でした。

一度この確認を挟むと、勝ち負けの理由が題材の選び方と作りの質に分けて見えるようになります。私たちは当たった型を次へ移す運用を回していますが(たまたまの当たりを再現できる成果に変える話)、棚を間違えていると、その型が効いたのかどうかも判定できません。作る前の数分は、後の判断の精度に返ってきます。