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AI活用

AIの自動仕訳が間違っている——「推測」と「確定」を混ぜない

結論: AIの出力は「推測」と「確定」に分けてから処理します

会計ソフトが提案してくる仕訳には、性質の違う2種類が混ざっています。AIが摘要から推測して付けた科目と、あらかじめ登録したルールで機械的に確定した科目です。 この2つが同じ画面に同じ見た目で並ぶことが、間違いの入り口でした。

私たち株式会社隼は、銀行口座とカードの明細を会計ソフトに自動で取り込み、仕訳待ちの行をまとめて処理しています。その処理で、選んでいない明細まで一緒に登録される事故を起こしました。気づいたのは登録した直後ではありません。後から別の経路で数え直したときです。

以下は、何が起きたのか、なぜ画面では気づけなかったのか、どう分けることにしたのかを、実際の判断のまま書いています。

何が起きたのか?

答えを先に言うと、仕訳待ちの行を全部まとめて選び、一括登録を押していました。

取り込んだ明細は、月をまたぐと数十件から百件単位で溜まります。1件ずつ科目を選ぶのは時間がかかるので、私たちは画面上の行をまとめて選び、一括登録で片付けていました。速さの面では確かに速かった。

ところが、この一括登録が選択していない行まで巻き込んで登録したことがありました。こちらがチェックを入れていない明細が、同じ操作のなかで一緒に確定していたわけです。しかも登録された科目は、見た目にはそれらしいものでした。金額も日付も正しく、科目だけが本来と違う。画面を眺めているかぎり、異常には見えません。

仕訳待ちの明細をすべて選んで一括登録していた状態から、摘要で同じ種類だけに絞り込み、印が確定の行だけを選び、最後に別経路で検算するまでを段階的に絞り込む形で示した図

なぜ画面では気づけなかったのか?

理由はシンプルで、自動化が正しく動いているように見えるからです。

止まった自動化はすぐ分かります。厄介なのは、大半を正しくこなしながら一部だけ静かに間違える仕組みのほうです。会計ソフトのルールは「この文字列を含む明細はこの科目」という形で動くので、いったん噛み合うと迷いなく科目を付け続けます。間違ったルールほど、堂々と正しそうな結果を出します。

同じ性質の間違いを、入金の取り込みでも踏みました。決済サービスの入金が、銀行口座の明細と決済サービス側の明細という2つの経路から入ってきていたのです。銀行側にはルールが効いていて、自動で売上として処理されます。一見すると何も問題がない。けれど決済サービス側にも同じ入金の明細が並んでいて、両方を登録すれば売上は二重に計上されます。私たちは片方を対象外に回し、もう一方だけを残す形に直しました。同じ取引が二重に入る話は請求書の二重登録を止めた記事にも書いています。

どう分けているのか?

変えたのは3つです。

1つ目は、画面上の印で行を分けたことです。会計ソフトの仕訳待ち画面には、AIが推測して付けた科目と、ルールで確定した科目を見分ける印が付いています。凡例は画面の下のほうに小さく置かれていて、私たちも最初は見ていませんでした。今はこの印を基準に、確定した行だけをまとめて登録し、推測の行は1件ずつ確認してから登録します。

2つ目は、まとめて処理する前に対象を絞ることです。明細の摘要(取引の説明文)で検索をかけ、同じ種類の取引だけを画面に残してから登録します。同じ種類しか画面にない状態なら、巻き込みが起きても被害が同じ科目の中に収まります。一括処理そのものをやめたのではなく、一括処理してよい状態を先に作る、という順番に変えました。

3つ目は、用途が分からない明細をAIにも人にも推測させないことです。摘要が空の決済は、社内の決済通知のやり取りをさかのぼれば、担当者が用途を書き残していることがあります。それでも分からないものは、その場で科目を決めず担当者に直接聞きます。推測で埋めた1件は、後から見ても推測だったことが分からなくなる——これが一番あとを引きます。

摘要で同じ種類だけに絞る、印が確定の行だけをまとめて登録する、推測の行は1件ずつ確認する、用途不明は聞くまで登録しないという4つの手順を左から順に並べた図

登録した後に何を確かめるか?

答えを先に言うと、操作した画面とは別の経路で数え直します。

私たちは登録が終わった後、会計ソフトのデータ連携機能から当日登録した仕訳を全件取り出し、件数と科目を照らし合わせています。理由は単純で、間違いを作った画面の上では、その間違いが正しく見えるからです。選んだつもりの件数と実際に登録された件数が合っているか。想定していない科目が混ざっていないか。この2点だけを見ています。私たちはこれを「別経路の検算」と呼び、まとめて処理する操作には必ず付けています。

同じ考え方で、日々の売上や残高も**帳簿の数字と実際の口座残高という2系統で持っています。**会計上の処理が追いつく前でも実態が分かるようにしておく話は速い実数と正しい会計を二重に持つ記事に書きました。数え直す経路がもう1つあるかどうかで、気づける間違いの範囲が変わります。

別経路の検算で確認する件数の一致、想定外の科目の混入、同じ取引が二重に入っていないか、印が推測のまま登録されていないかという4つの確認項目を並べた図

私たちがまだ人に残していること

正直に書くと、仕訳の確定は今も人が画面で行っています。

AIに任せているのは、明細の取り込みと、科目の候補出しと、登録後の照合までです。金額の確定に関わる操作は、AIが自動で実行しない扱いにしています。処理の速さより、間違いが混ざったまま帳簿に残ることのほうが後で高くつくと考えているからです。判断を任せる前に合格の条件を先に決める考え方はAIへの指示で合格条件を先に決める記事に書いています。

税務や会計の最終的な判断は、私たちも税理士に確認しています。ここで書いているのは処理の進め方であって、科目そのものの正解ではありません。

明日からできること

まず、使っている会計ソフトの仕訳待ち画面を開いて、AIが推測した行とルールで確定した行を見分ける印がどこにあるかを探してみてください。多くのソフトは凡例を画面の隅に置いています。印が見つからないうちは、まとめて登録する操作を使わないほうが安全です。

そのうえで、まとめて処理する操作に1つだけ手順を足します。処理した後に、操作した画面とは別の場所で件数を数え直す。 明細の一覧でも、月次の集計画面でも構いません。同じ画面で確認しているかぎり、間違いは正しい顔をしたまま残ります。

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