結論: 人を増やす前に決めるのは、現場が管理職より稼げるかどうかです
弊社が組織の拡大を検討したとき、最初に出てきた問いは採用の人数でも募集の出し方でもありませんでした。管理職より稼いでいる現場が、一人でもいるか。 これを最初の判断軸に置きました。
理由は単純です。ここに「いいえ」と答えが出る会社では、現場が全力で数字を取りに行く理由が構造として存在しません。頑張っても届く上限が見えている状態で、上限の先を取りに行けというのは、精神論でしか成り立たない話です。人を増やすより先に、増えた人が伸びる余地のある形になっているかを確かめる。順番はこちらが先だと考えました。

人を増やす検討で、なぜ最初に報酬の話になったのか?
答えを先に言うと、報酬設計は採用より前にしか直せないからです。人が増えたあとで「稼げる形」に組み替えると、既存の待遇との整合を取る作業が必ず発生します。増える前なら、まだ紙の上で決められる。
私たちがこの順番を意識するようになったのは、事業を始める前に決めておくべきことを後回しにすると判断が鈍る、という経験が別の場面でもあったからです。畳むときの基準を先に決めておく考え方は撤退ラインを始める前に決める記事にまとめました。撤退の基準も報酬の設計も、性質は同じです。渦中で決めようとすると、目の前の事情に引っ張られて決められなくなります。
管理職と現場は、そもそも何が違う役割なのか?
役割の定義を先に分けました。管理職は、すでにある売上を維持し、最大化する人。現場(営業や制作)は、売上を新しく作る人です。この2つを同じ物差しで評価すると、設計が必ずねじれます。
なぜなら、成長の速度を決めているのは新しく作る側だからです。にもかかわらず、多くの給与の並びでは、維持する側のほうが上に置かれています。役職が上がるほど報酬が上がる形しか持っていないと、現場で成果を出した人の行き先が管理職しかなくなる。新しく売上を作れる人を、作らない側へ異動させることでしか報いられない構造になってしまいます。
弊社はここで、役割の上下ではなく役割の違いとして扱うことにしました。管理職になることが唯一の出世ではない、という形を先に決めておく。そうすれば、現場に残って成果を伸ばす道を選んでも報われます。
成果を出した人が上限にぶつかると、何が起きるのか?
答えを先に言うと、その人が取りに行く量が上限に合わせて下がります。頑張って上限に届いた人は、次の期も同じ上限までしか届きません。届いたあとの努力が数字として返らないと分かった時点で、努力の総量は自然に上限へ収束していきます。
逆に、成果がそのまま報酬に反映される形にしておくと、取りに行く理由が本人の側に残り続けます。私たちが目指しているのはこの循環です。数字目標そのものを自分ごとにする設計はKPIにご褒美を紐づける記事で書きましたが、報酬設計はその土台にあたります。ご褒美は短期の動機づけ、報酬設計は長期の動機づけ——効く時間の長さが違うだけで、狙いは同じです。

増やす前に、何を並べて見える化するのか?
弊社が拡大の検討にあたって並べたのは3つです。1つ目は現場が成果を出したときに実際に受け取る額、2つ目は管理職一人にかかっている費用、3つ目は現場一人が新しく作れる売上の見込みです。この3つを同じ紙に並べると、成長の速度を実際に決めているのが誰なのかが数字で見えます。
並べてみるまでは、私たちも感覚で「現場が大事」と言っていました。数字にすると、その大事さがどの程度なのかが初めて具体になります。感覚のままだと、採用の予算をどちらに寄せるかの判断が結局は声の大きさで決まってしまう。

正直に書くと、まだ結果は出ていません
弊社はこの設計を置いた段階で、拡大の結果が出るのはこれからです。現場が管理職より稼ぐ状態が実際に生まれるのか、生まれたときに管理職側の納得をどう作るのか。どちらもまだ運用しながら確かめている最中で、うまくいくと断言できる段階にはありません。
それでも、増やす前に判断軸を1つ決めておくかどうかで、増えたあとに直せる範囲は大きく変わると考えています。設計が外れていたと分かったときに、何が外れたのかを名指しできる。それだけでも、置いておく価値はあります。
今日から試せる一歩
紙を1枚使って、2つの数字を並べて書いてみてください。1つ目は、自社で最も成果を出している現場の人が今期受け取る想定額。2つ目は、その人の上にいる管理職一人にかかっている年間の費用です。
2つを見比べて、前者が後者を超える道がそもそも設計上あるかどうかを確かめる。道がなければ、そこが人を増やす前に直す場所です。増やしてからでは、同じ変更に説明と調整の手間が上乗せされます。