結論: 初回の目的は売上ではなく、次に来る理由をつくることです
新しいサービスや商品を世に出す初回に、私たちは売上目標を置きません。置くのは接点です。来てくれた全員と一度は言葉を交わせること。そして全員の手元に何かが残ること。この2つを満たす形にすると、品数はむしろ絞ることになります。初回で最大化するのは、その日の売上ではなく2回目が生まれる確率です。
初回に品数を増やすと、なぜ次につながらないのか?
答えを先に言うと、選択肢が増えるほど、その日にできる会話の量が減るからです。品数を増やせば、その日の売上は積み上がります。ただし現場の時間は増えません。説明と会計に時間が流れ、初めて来た人と話す時間がいちばん先に削られます。
私たちも、新しく立ち上げたラインの初回でこの案を検討しました。用意できるものは他にもあり、種類を増やすほうが売上の見込みは立ちます。実際に一度はその方向で組みかけました。そこで止めた理由は1つで、初回に来る人の大半が、その日はじめて中身を知る人だったからです。まだ何も知らない相手に選択肢を並べても、選べません。選べないまま帰る人が出ます。
結果として、種類は絞り、来た人全員が手ぶらで帰らない構成にしました。売上は増やせる分を捨てています。捨てた理由は、初回の目的を売上に置いていないからです。

初回に置いた2つの条件
答えを先に言うと、①全員と一度は話せること②全員の手元に何かが残ること、の2つです。どちらも売上とは別の物差しです。
1つ目は、会話の総量を先に確保するという意味です。人数と時間から逆算すると、1人あたりに使える時間はすぐ計算できます。そこから逆算して、当日にできることを削っていきます。
2つ目は、記念になるものを全員分そろえるという意味です。何も持たずに帰った人は、翌日にはその日のことを思い出す手がかりを持ちません。高価である必要はなく、手元に残ることに意味があります。
初回の設計は、足し算ではなく引き算になります。当日にやりたいことは無限に出てきますが、この2条件を割ってまで足すものは無い、という順番で決めています。

初回の数字は、何で見ればいいのか?
答えを先に言うと、その日の売上ではなく、接点の数と2回目の発生で見ます。初回の売上だけを見て次の判断をすると、ほぼ必ず「もっと品数を増やそう」という結論になります。その日いちばん動いた数字がそれだからです。
私たちは、初回のような認知の段階と、そのあとの購入の段階を分けて数えています。同じ指標を1本でつないでしまうと、手前の段階の努力が見えなくなり、途中の改善点も見えません。この分け方はフォロワーが増えても売れない理由を段階で分けて見る話にも書きました。
分けて数えると、初回の評価は変わります。売上が想定より低くても、来た人のほとんどと話せていて、次に来る理由が生まれていれば、その初回は成功です。逆にその日の数字だけが良く、誰とも話せていない初回は、次の回で必ず落ちます。初回は接点の数で評価し、売上は2回目以降で見ます。
物差しを先に決めておく理由はもう1つあります。初回が終わった直後は、現場も社内も当日の手応えで判断しがちだからです。手応えは人によって違います。数え方だけでも先に決めておけば、振り返りが感想の言い合いになりません。
2回目の理由は、初回のうちに仕込む
答えを先に言うと、初回にやるべきなのは、相手の中で対象を1つに決めてもらうことです。会社そのものを好きになってもらうのは時間がかかります。担当者でも、商品でも、コースでも構いません。「次はこれ」と言える対象が1つ決まると、2回目に来る理由が具体的になります。
反対に、初回で全体をまんべんなく紹介すると、印象は平らになります。良い会社だった、で終わり、次の予定は入りません。私たちが初回に会話の時間を確保する理由もここにあります。対象が決まる瞬間は、たいてい商品の説明ではなく、人と話しているときに起きるからです。初回で決めてもらうのは会社そのものではなく、次に選ぶ対象1つです。
そのあとの連絡の間合いは別の設計です。来店や購入のあと、いつ思い出してもらうかは日数で組み立てます(来店後の「間合い」を日数で設計する話)。初回で対象を決めてもらい、間合いで思い出してもらう——この2つは順番に効きます。片方だけでは続きません。

明日から試せる一歩
次の初回に向けて、当日に用意する予定のものを紙に書き出し、そのうち1つを消してみてください。消したぶんの時間が、来た人と話す時間になります。
そのうえで、当日に見る数字を売上以外に1つ決めます。話せた人数でも、手元に何かが残った人の割合でも構いません。数え方さえ決めておけば、初回が終わったあとに「売れなかった」以外の言葉で振り返れます。振り返れる初回だけが、2回目の設計につながります。