結論: 差を生むのは能力ではなく、任せられる作業を知っているかどうかです
半年前と仕事の進め方が変わっていないなら、能力ではなく手持ちの道具の把握を疑うのが早いと考えています。この半年でAIにできることは明らかに変わりました。調べる・要約する・整理する・下書きするといった作業は、以前は当然人が手を動かすものでしたが、いまは指示を出せば返ってきます。
弊社も最初から使えていたわけではありません。「AIに何ができるか」を調べる時期を経て、詰まっていたのは別のところだと分かりました。この記事では、弊社が半年で何をどう変えたのか、どこで失敗して線を引き直したのかを開きます。
「知らない」とは、具体的に何を知らないのですか?
答えを先に言うと、知らないのはAIの性能ではなく、自社のどの作業がAI向きなのかです。弊社が最初に踏んだ失敗は、いちばん重い仕事から任せようとしたことでした。判断が絡む作業を渡し、返ってきたものを人が全部作り直す——結果として、任せる前より時間がかかりました。
うまくいき始めたのは、順番を逆にしてからです。人が判断しなくても正解が決まっている作業、間違っていてもやり直せば済む作業から渡す。すると同じAIが、同じ指示の出し方で、はるかに使える結果を返しました。性能が足りなかったのではなく、渡す作業の選び方を知らなかっただけでした。 どの順番で入れるかはAI自動化の導入順でも整理しています。
仕事の起点は、どう変わったのですか?
起点が「自分でやる」から「指示を出す」に変わりました。具体的には、思いついた作業をまずチャットの1つの窓口に投げ、返ってきたものを見て判断します。手を動かす時間が減り、どれを採用するか・これは出していいかを決める時間が増えました。

副次的な効果のほうが大きく効きました。1つの作業に張り付かなくなったので、指示を出して別のことに移れます。思いついた瞬間に投げられるため、移動中や現場でも仕事が止まりません。派手さはありませんが、この積み重ねが半年で差になります。
任せる作業は、どう見分けていますか?
弊社は2つの軸で仕分けています。後戻りできるかと、繰り返すかです。後戻りできて繰り返す作業がいちばん相性が良く、ここから手をつけます。逆に、後戻りできない作業は繰り返すものであっても人が最後を握ります。

この見分けができると、依頼の粒度も変わります。「いい感じにやっといて」ではなく、何ができていれば合格かを先に決めて渡す。弊社ではこれをAIへの指示は合格条件から決めるとして運用にしています。任せられないと感じる作業の多くは、能力の問題ではなく、合格条件を言葉にできていない作業でした。
AIに任せなかったことは何ですか?
送信・公開・お金の操作・削除は任せていません。ここは間違えたときに取り返しがつかないためで、AIは直前まで用意し、実行だけを人が行います。実はこの記事も同じ扱いで、本文は用意できていても、公開の操作そのものは人の手を通しています。
線引きの詳細はAIに勝手にやらせない6つの操作に書きました。取り返しがつく作業とつかない作業を先に分けておくと、任せる範囲は思っているより広く取れます。 危ないのは、線を引かないまま「全部任せるのは怖い」と全体を止めてしまうことです。
承認する仕事ばかり増えませんでしたか?
増えかけました。任せる範囲を広げるほど、人が確認する回数が増えます。弊社は最初、確認をすべて手で行っていましたが、これでは作業が承認業務に置き換わっただけです。
そこで2つ入れました。1つは、確認を絵文字1つで済ませる形にすること(詳細は絵文字だけで承認を回す)。もう1つは、承認がほぼ確実に通り続けたものだけ、承認そのものを外して事後報告に切り替える卒業の仕組みです。あわせて、提案が48時間反応なく放置された場合は自動で取り下げます。放置されているのは、たいてい必要ないという意味だからです。

今日から試せる一歩
読んで終わりにならないよう、今日ひとりでできる形に落とします。直近1週間で「面倒だな」と感じた作業を3つ書き出し、後戻りできるかどうかで2つに分けてみてください。 紙とペンで数分あれば終わります。
後戻りできる側に残ったものが、最初に任せる候補です。そこから1つだけ選び、何ができていれば合格かを一緒に書いてから渡してみる。半年後の差は、道具の性能ではなく、この1回目を踏んだかどうかで開きます。