AI活用AI活用事例 #22

AIに経理をどこまで任せるか——線引きは「元に戻せるか」

隼 編集部

YouTube運用とAI業務支援の担当

AIに経理をどこまで任せるか——線引きは「元に戻せるか」

結論: 経理は「ルールで決まるか」と「元に戻せるか」の2つで分けます

弊社は経理の作業を、AIがやる、AIが止まって人に聞く、人がやる、の3つに分けています。分けるときに見るのは「ルールで決まるか」と「元に戻せるか」の2つだけです。

今年の春から、経理を少しずつAIに任せてきました。その間にAIは何度も間違えています。それでも任せ続けられているのは、間違えても人が気づける作業と、取り返しがつく作業だけを渡しているからです。振込はAIにさせていません。

この記事では、2つの問いでどう分けているか、実際に起きた間違い4件、間違いに気づくために先に作った形を順に書きます。税金や会計処理の正しさを解説する記事ではありません。弊社でどう運用しているかの実例です。

経理の作業をルールで決まるかと元に戻せるかの2つの問いで4つに分け、ルールで決まり元に戻せる作業だけをAIに渡し、振込のように戻しにくい作業は人に残すことを示した図

2つの問いで、作業はどう分かれるのか?

答えを先に言うと、ルールで決まり、元に戻せる作業だけをAIに渡しています。

1つ目の問いは「ルールで決まるか」です。いつも同じルールで決まる作業はAIがやります。その場の判断がいる作業は、AIが止まって人に聞きます。

2つ目の問いは「元に戻せるか」です。支払い予定の一覧に入れた数字は、間違っていれば直せます。振り込んだお金は簡単には戻せません。戻しにくい作業は人がやります。

AIがやっているのは、読む・並べる・突き合わせる・見張る・知らせるの5つです。届いた請求書を読んで支払い予定の一覧に入れる。支払期限を見張って知らせる。期限を過ぎた請求を銀行の入金明細と突き合わせる。どれもルールで決まり、間違えても直せます。請求書の読み取りは振込の前に人が元の請求書と見比べる運用の記事に詳しく書きました。

2つの問いの前に、確かめていることがもう2つあります。その情報をAIに見せてよいか。その作業をAIに任せると会社として決めているか。2つの問いを使うのは、この確認が済んだ後です。

AIが「止まって人に聞く」のは、どんなときか?

ルールで決められないときです。弊社がいちばん大事にしているのは、この止まる動きです。

会社のカードが分かりやすい例です。カードが使われると、決済の通知が仕事用のチャット(Slack)に届きます。AIは平日に2回、その通知を見に行きます。いつも使っている支払先なら何もしません。初めての支払先のときだけ、使った人に「この決済は何の費用ですか」と通知への返信で聞きます。答えが来て、代表が承認してから会計に入れます。

AIに店の名前から科目(費用の分類)を推測させ、そのまま登録させることはしていません。間違った科目が帳簿に載るからです。請求書も同じ扱いです。読めなかった項目は「読めなかった」と書かせます。それらしい数字で埋めて先へ進ませない。 推測と確定を分ける考え方は、AIの自動仕訳で推測と確定を分けた記事と同じです。

任せてから、AIは実際に何を間違えたのか?

弊社で見つかった間違いは4件で、そのうち3件は「問題があります」という誤った知らせでした。AIが誤ってお金を払った間違いは起きていません。

AIに経理を任せてから見つかった4件の間違いについて、AIが知らせてきた内容と原因と直したことを1件ずつ並べた表

1件目。合計と内訳が合っているかを見張る仕事が、毎日「合っていません」と知らせてきました。調べると実際は合っていました。ある事業の内訳だけ数字の書き方が違い、AIがそれを読めていなかった。読み方を直しました。

2件目。カードの経費を自動で取り込む形に切り替えたときです。それまで手で入力していた分と突き合わせると、5件が二重になっていました。重なった分を整理し、同じ重なりが起きない仕組みに直しました。

3件目。入金されている請求を「未入金です」と知らせてきました。原因は見ている場所です。会計の帳簿だけを見ていたので、銀行に入金があっても帳簿に書かれるまでは見つかりません。銀行の入金明細を先に見る形に直しました。

4件目。外注先の請求書が届いているのに「まだ届いていません」と知らせてきました。請求書を種類で絞って探していたのが原因で、その1枚は別の種類で登録されていました。絞らずに探す形に直しました。

4件を並べると、AIの知らせがいつも正しいとは限らないことが分かります。だから「未入金です」という知らせが来ても、AIが相手に連絡することはありません。連絡するかどうかは人が決めます。

見つかった間違い4件のうち3件が問題ありという誤った知らせで、AIが誤ってお金を払った間違いは0件だったことを示す3つの数字の図

間違いに気づくために、先に何を作っているのか?

AIは間違える前提で、気づける形を3つ先に作っています。

1つ目は、分からないときは止まることです。請求書の読めない項目は空欄のまま知らせてきます。同じ請求書が二重に入りそうなときは、登録を止めて知らせてきます。

2つ目は、作る仕事と見張る仕事を分けることです。数字を入れる仕事とは別に、合計と内訳が合っているかを見張る仕事を置いています。2件目の二重の5件のように、突き合わせて初めて見つかる間違いがあるからです。見張りそのものが止まったときの気づき方は、自動化が静かに止まる問題の記事に書いています。

3つ目は、元に戻せないことは人がやることです。振込は人がやります。支払い予定の一覧には、行の横に元の請求書を付けてあります。気になったらその場で開いて確かめられます。

人に残していること、まだ防げないことは何か?

人がやっているのは、振り込む、払った後に一覧へ印を付ける、入金が遅れている相手に連絡するかを決める、科目の質問に答える、月を締める、の5つです。税金の判断は税理士にお願いしています。AIと社内だけで決めることはしていません。AIがまとめた数字は、税理士も見られる表に毎晩移しています。

AIを入れて、経理の担当者や税理士が要らなくなったわけではありません。弊社で減ったのは、書き写す・探す・覚えておくという作業です。確かめる・決める・払うは人に残っています。

防げない間違いも残っています。AIが読めたつもりで間違えた数字は、見張りでも見つからないことがあります。だからAIがお金を動かす形にはしていません——何を任せるかと一緒に、間違いにどう気づくかを決めておく。弊社ではここまでを含めて、経理をAIに任せると考えています。

明日から試せる一歩

経理の作業を1つ選び、2つの問いを当ててみてください。いつも同じルールで決まるか。間違えたとき元に戻せるか。両方が「はい」の作業が、最初にAIへ渡す候補です。どちらかが「いいえ」なら、決めるところは人に残します。

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